近年、音声メディアがますます注目を集める中、通勤時間や家事をしながら楽しめるポッドキャストに関心を持つ人が増えています。リスナーとしてただ聴くだけでなく、自分でも配信してみたいと思いながら、「どう始めればいいの?」「機材をそろえるのが大変そう…」と、一歩を踏み出せずにいる人も多いのではないでしょうか。実は今、スマホ1台あれば、収録から配信まで完結できる時代なんです。本記事では、ポッドキャスト「ドングリFM」のパーソナリティを務めるnarumiさんに、機材の準備から、収録・編集のコツ、リスナーへの届け方まで、分かりやすく解説していただきました!
目次
スマホ1台でOK! ポッドキャストを始めるための準備と基礎知識
一見、ハードルが高そうなポッドキャストですが、スマホ1台からでも手軽に始められます。まずは、テーマの決め方や収録や編集に必要な基本的なアプリについて見ていきましょう。
そもそもポッドキャストって? テーマ選びのヒントも紹介
ポッドキャストは、インターネット経由で音声コンテンツを配信・視聴できるメディアです。スマホやパソコンで手軽に聴くことができ、プロ・アマ問わず、誰でも自由に配信できるのが特長。特定のアプリに依存しない “オープンな仕組み” により、さまざまなサービス・プラットフォームで同じ番組を聴くことができ、多種多様なジャンルの番組が世界中で配信されています。
YouTubeなどの動画配信は、顔出しや部屋の映り込み、編集作業などハードルが高いもの。その点、ポッドキャストはスマホ1台で話すだけで手軽に始められるため、 “SNS以上・YouTube未満” の発信をしたい人にぴったりのメディアといえます。では、ポッドキャストを始める際、どのようにテーマを決めればいいのでしょうか?
narumiさん 「ご自身の生活や趣味、仕事など、身近なところからテーマを探すのがおススメです。例えば、スポーツ観戦などの趣味や、推し活、勉強していること、あるいは友だちとの雑談をそのままコンテンツにしてもいいですね。日常からテーマを掘り下げることで、無理なく続けやすくなります」
ポッドキャストを始めるために必要なものは意外とシンプル
収録から配信までスマホ1台でできるシンプルさもポッドキャストの魅力。最低限必要なアプリは次の3つです。
- 録音アプリ
- 音声編集アプリ
- 配信アプリ
配信アプリは「Spotify for Creators」などのホスティングサービスを利用します。一方、録音や編集に必要なアプリは、どれを選べばいいのでしょうか?
iPhoneの場合 | 録音アプリは、iPhone に標準で搭載されている「ボイスメモ」が役立ちます。初心者であれば、編集アプリも標準搭載されている「GarageBand」で十分です。まずはこの2つから試してみると、スムーズに始められます。 |
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Androidの場合 | Androidは、録音や音声編集アプリが標準で搭載されていません。Google Play のレビューやダウンロード数が多いものを試してみて、自分に合うものを選ぶのがおススメです。 |
パソコンの場合 | 録音と編集の両方に使える無料ソフト「Audacity」を使うと、収録から編集までワンストップで行えます。より高度な編集をしたい場合は、「Adobe Audition」やAppleの「Logic Pro」など、プロ向けのツールを使ってみましょう。 |

スマホで録音した音声は、配信アプリを使ってスマホからそのままアップロード可能
narumiさん 「パソコンで収録する場合は、オーディオテクニカの『ATR2100x-USB』というUSB接続とXLR端子の両方に対応したマイクがおススメです。パソコンに直接つなぐこともできますし、必要に応じてオーディオインターフェース(マイクなどをPCにつなぐための機器)を使って、さらに高音質で録音することもできますよ」

本格的に収録する際、narumiさんはSHUREのダイナミックマイク「PGA58-XLR」と、Steinbergのオーディオインターフェース「UR12」を使用
収録から編集まで! ポッドキャストを聴きやすくするポイントとは?
話している内容がどれだけ面白くても、音声が聴き取りにくいと途中で離脱されてしまうことも。ここでは、収録時のテクニックや、編集の有無でコンテンツの印象がどう変わるかなど、番組をより聴きやすく仕上げるためのコツをご紹介します。
いざ、収録! ノイズを減らすためのテクニック
収録の際、顔が下を向いているとボソボソした声になってしまいます。スマホで収録するときはスマホスタンドを使い、顔を上げて話すことを心がけましょう。また、1人で話していると、どうしても声が小さくなりがちです。会議室で端の人まで声を届けるイメージで話すと聴き取りやすい声になります。
家で収録をする場合、周囲の環境音はノイズの原因になります。エアコンを切る、冷蔵庫に近い場所で収録しないなど、なるべく環境音が入らないよう工夫しましょう。さらに、テーブルをトントン叩く、ボールペンをノックするなど、無意識のクセもノイズになりやすいもの。ノイズをなくすには、手に何も持たず、慣れないうちは手を腰の後ろで組むくらいの気持ちで収録するのがいいでしょう。
narumiさん 「ポッドキャストの配信者の中には、ウォークインクローゼットで収録する人もいます。服が音を吸収して声の反響を抑えてくれるため、ノイズが少なくなるんです。布をかけたテーブルの下や、カーテンに囲まれた空間なども、即席の録音ブースとして活用できますよ」
初心者によくあるミスとしては、録音ボタンの押し忘れが挙げられます。また、外部マイクで録音しているつもりでも、内蔵マイクで録音されてしまうなど、マイクの入力設定ミスは慣れている人でもついやりがち。「①録音ボタン、②マイクの接続、③マイクの入力設定」は、収録前に確認する3点チェックとして、指さし確認を習慣にしておきましょう。

narumiさんのオフィスでの収録環境
編集なし・編集ありの違いって?
ポッドキャストに “正解” はありません。スマホの音声編集アプリで収録した音声の最初と最後をトリミングするだけでも、1エピソードが完成します。例えば、カフェで友人とした雑談を収録して配信する場合、周囲の雑音や2人で同時に話し始めるなどのハプニングも、ライブ感のある演出になります。
一方、音声編集アプリで編集をすれば、「サーッ」というホワイトノイズを消したり、フィラーと言われる「あのー」や「えっと」といった言葉をカットしたりできるため、聴き心地が良くなります。さらに、BGMやジングル(短い音楽など)を入れると、より「番組っぽく」仕上がります。

パソコンで収録音声を編集中のnarumiさん
効果音やBGMの入れ方で「プロっぽさ」をプラス
ポッドキャストは1つのエピソードが終わると、自動的に次のエピソードが再生される仕組みになっていることが多く、各話の区切りを明確にするためにも、始めと終わりにイントロ・アウトロを入れるのがおススメです。音の始まりや終わりにフェードイン・フェードアウトなどの効果を加えると、区切りがより明確になります。また、1つのエピソードの中で話題が変わる場合は、間にジングルを入れると、リスナーも「話題が変わったな」と認識しやすくなります。
BGMやジングルは、ネット上にフリー素材がたくさん公開されています。利用する際は、「著作権上、二次利用が認められている素材」かつ「番組のテーマに合うもの」を選ぶことを意識しましょう。
narumiさん 「最近は、BGMを入れない人が増えてきています。その理由は、倍速視聴する人が増えたから。声が倍速になっても支障はありませんが、BGMが倍速になると違和感が生じやすいんです。私自身も、会話中はBGMを入れないようにしています」
どこで配信する? ポッドキャストの配信方法とリスナーを増やすコツ
録音・編集したエピソードはどのようにリスナーに届けていけばいいのでしょうか? ここからは、配信プラットフォームの違いや、ポッドキャストを長く続けるためのヒントについて見ていきましょう。
配信プラットフォームの違いと選び方
音声配信のプラットフォームは、「ポッドキャスト」と「独立系サービス」の2つに大きく分けられます。
- ポッドキャスト
「Spotify for Creators」などのホスティングサービスに編集済みの音声ファイルをアップロードすると、AppleやSpotify、Google などのポッドキャストアプリを通じて、自身のポッドキャスト番組を自動的に配信することができます。ポッドキャストは世界中にリスナーがいます。つまりそれだけ配信者も多いため、自分の番組を見つけてもらうためには届ける工夫が必要です。
最近では、Spotifyをはじめとする一部のプラットフォームで、音声に映像を加えて配信する「ビデオポッドキャスト」も普及してきました。番組の雰囲気が伝えやすくなる、視覚的な情報を補えるといったメリットがあり、配信スタイルの選択肢が広がっています。また、プラットフォームが推進しているフォーマットは、それだけ露出が増えるというメリットもあります。つまりビデオポッドキャストは現在、ヒットしやすい環境にあると言えるでしょう。 - 独立系サービス
代表的なサービスには「Voicy」「Stand.fm」「SPOON」などがあります。これらはアプリ内でコンテンツを配信・視聴できるクローズドな配信プラットフォーム。アプリ単体で収録から配信まで完結できるサービスも多く、初心者でも手軽に配信できる点が特長です。ポッドキャストに比べてリスナーは少ないですが、コンテンツに対するリスナーの比率は高く、再生されるチャンスも比較的高めです。
narumiさん 「自分の番組を作るために最低限必要なのは、①番組のタイトル、②番組の説明、③カバーアートの3つです。リスナーに見つけてもらうためにも、短くてわかりやすく、番組のテーマに合ったタイトルやカバーアートを作成しましょう」

narumiさんがパーソナリティを務めるポッドキャスト「ドングリFM」のカバーアート
エピソードの概要文には何を書けばいい?
概要文に話した内容を詳しく書き出す必要はありません。例えば、最近観た映画のことを話したなら、その映画の公式サイトのURLを載せるだけで十分です。エピソードの内容を補足する「リンク集」のように活用するのがおススメです。
自分のポッドキャスト番組を広めるためにできること
- 1エピソードの長さは15〜20分
リスナーにとって、知らない番組をいきなり長時間聴くのはハードルが高いもの。1時間を週1回配信するよりも、15〜20分程度を週2回配信する方が、リスナーが番組に触れる機会が増えやすくなります。 - 1エピソード1テーマを意識する
1つのエピソードにいくつもテーマを詰め込むと、タイトルが決めづらくなります。結果的に、聞き終わったあとに印象が薄れてしまうことも。「最近観た映画」や「最近読んだ漫画」など1テーマに絞ると、リスナーにレコメンドされやすくなり、そのジャンルのファンに見つけてもらいやすくなります。 - SNSでの告知は動画を活用
リスナーを増やすためにSNSで告知をすることは大切ですが、最近は投稿に外部リンクを貼ると、SNS上での表示回数(リーチ)が少なくなる傾向があります。
narumiさん 「現在、さまざまなSNSプラットフォームでは動画が優遇されています。自分の番組を知ってほしい場合は、エピソードの面白い部分を短い動画にして投稿に貼り付け、『ポッドキャストを公開しました』と告知すると効果的だと思います。また、エピソードの冒頭を500〜1,000文字くらい書き起こして、長文ポストをしてもいいですね」

「ポッドキャストは、長く続けるほど楽しくなっていきます。ドングリFMはもうすぐ10年目を迎えますが、日記のように過去のエピソードをさかのぼると感慨深いですね」とnarumiさん。
最初は再生数が少なくても気にせず、自分のペースで続けていくことが大切です。10話、20話と続けるうちに、リスナーとの交流が生まれ、ポッドキャストがライフワークに変わっていくかもしれません!
(掲載日:2025年6月4日)
文:東谷好依
編集:エクスライト